こんにちは、かじです。
今回は足の指をぶつけてしまった時に骨折を疑う症状を見極めるヒントをお話しします。この記事を呼んで指の骨折を疑った場合は病院でレントゲンを撮ってもらって下さい。(※足の指の事は、正確には足趾(そくし)と呼びます。)
それでは、
参考記事
▶かじのプロフィール
足の指をぶつけたという高校生
2~3年前に診察した高校生の話をします。とても印象的だったのでいまだに覚えています。
ある当直の日、その日は結構忙しくて、遅くまでずーっと患者さんが来ていました。
24時を過ぎて、やっと患者さんが途切れ「やっと休めるな。」と当直室に戻って一息ついたところで、病院用の携帯が鳴りました。
(※病院に勤務している医者には「当直」という仕事があります。病院には入院患者がいるので、24時間ずっと必ず医者が1人はいる決まりになっています。
通常勤務が終わってみんなが帰った後、次の日の朝まで病院にいる当番の事を「当直」と呼びます。私達ドクターは「当直室」という待合室に待機して、病院に患者さんが来ると呼び出されて診察をするのです。)
電話に出ると病院の電話当番の方からで、「患者さんから問い合わせがありまして、今から行くので診察して欲しいと言ってます。けれど、家が遠いので1時間くらいかかるらしいんです。どうしましょうか。」とのこと。
よく聞くと、高校生が家のタンスに足の小指をぶつけて、絶対に骨折してるからすぐに診察して欲しい。と言っているみたいです。
しかも、近い病院から電話をかけたけど、なかなかこの時間に診察してくれる病院がない、と。
「気持ちは分かるけど、そんな遠くから来るの大変だな。」と思いながら、「いいですよ、来てもらって下さい。」とすぐに来てもらう事にしました。
参考文献
▶足首の痛みと腫れが外側か内側か前側か後ろ側にあるかで治療が変わる!!医者による足首の痛み部位別まとめ
足の指の骨折の症状とは
「先生!これ折れてますか?マジ折れてたらシャレにならないすよ!!大丈夫すか?どうですか?」
高校3年生のI君は、足を引きずりながら診察室に入るなり、私にそう言ってきました。こういう風に患者さんが興奮している時はそのテンションに影響されてはいけません。
私は落ち着き払って、「まぁ、まず座りなよ。痛い所を診せてみて。」と言いました。確かにI君の右小指は腫れており、骨折している可能性も捨てきれません。
「先生!オレ来週試合なんすよ!高校最後の大会!!折れてたらシャレにならないんすよ!!」彼はさらにまくし立てます。
「そうか、何部なの?」と聞くと、「サッカー部っす!」と彼は言います。サッカーと聞くと、私も何とかしてあげたくなります。
「とりあえずレントゲンを撮ろう。話はそれから。」そう言って、ひとまずレントゲンを撮ってもらう事にしました。
参考文献
▶レントゲンとCTとMRIの違いとは?!整形外科の画像検査を医者が徹底比較!!
足の指を骨折したらどうなるのか
足の指の骨折といったら、私はある事件を思い出します。今から10年近く前のサッカーワールドカップでのこと。大会直前のスペイン代表の最終合宿である事件が起きました。
スペイン代表のゴールキーパー(当時のレギュラー)が、大きな香水のビンを足の親指に落として、骨折してしまったのです。
「たかが指でしょ?」
「何とかプレーはできるんじゃない?」
と思うかもしれませんが、手の指ならまだしもボールを蹴るサッカーでは足の指が骨折していては、ボールを蹴るたびに痛くて試合どころではありません。
泣く泣くそのゴールキーパーは、大会に出るのを諦めてスペインに帰っていきました。
4年に一度のサッカーワールドカップとは、それまでの4年間の努力の結晶をぶつける大会です。彼はきっと全てを失ってしまったかのような喪失感を味わったはずです。ちょっとした不注意で全てを失ってしまうなんて怖いな、そう思った記憶があります。
参考文献
▶足首捻挫の痛みと腫れへの応急処置とは?医者がRICE処置の基本を解説
足の指を骨折したら放置してよいのか
足の指をぶつけたり、物を落としたりすると骨折することがあります。指先の骨折はスポーツをしていない人にとっては、少し不便だけど日常生活には支障がない、というレベルです。
しかし、スポーツをしている選手にとってはかなりの支障が出ます。走るスポーツはさらに問題で、その中でもサッカーは最悪です。ボールを蹴りますからね。
ここで、骨折している足の指はどうなっているのかをまとめてお伝えします。
- 動かさなくても痛い
- 腫れている
- 内出血で紫になっている
- 動かすと激痛
- 普通に歩くことはできない
こんな症状がある場合は、ひとまずは骨折を疑って病院でレントゲンを撮るべきです。
というのも、I君が私に何度も質問していましたが、いくらドクターでも見ただけでは骨折があるか無いかは分からない事も沢山あるからです。
特に足先に骨折は骨がほとんどずれないので、見た目には変形しません。ですから、ただ痛くて腫れているだけで、同じ様に見えてもレントゲンを撮ってみると、骨折している事もあればしていない事だってあります。
ということで、足の指の骨折は見ただけでは分からない。という事になります。ガッカリかもしれませんが、これが正直なところです。
参考文献
▶足首捻挫で腫れなどの症状への処置でしてはいけない事を医者が詳しく解説
足の指の骨折の治療とは
先ほど少しだけ触れましたが、足先の骨折はほとんどずれません。
そもそも骨というのは、ずれなければそのままくっつきますので、そのまま大きな衝撃を加えなければ治ってきます。
他の部位を骨折するとギプスなどで固定しますが、足の指の場合は固定しない事が多いです。ほとんどの場合がずれてこないし、指先を固定するとサンダルも履けなくなってとても不便だからです。
もちろん、最善を尽くすのなら、しっかりと固定をして松葉杖というのもありですが、そうする事で他の部分を使わなくなるので筋肉が極端に落ちてしまいます。そうならない為にも、固定は隣の指と固定する程度にして、あとは痛くない所に体重をかけて歩いてもらいます。
例えば、小指を骨折したとしたら薬指と固定して、足の内側(親指の方)や踵に体重をかけながら歩けます。
参考文献
▶足首捻挫で腫れを減らす意味とは?!RICE処置をさらに詳しく解説
まとめ
ここまで、足の指の骨折についてお話ししてきました。
- 動かさなくても痛い
- 腫れている
- 内出血で紫になっている
- 動かすと激痛
- 普通に歩くことはできない
こんな症状があったら病院でレントゲンを撮りましょう。
もし骨折をしていたら2ヶ月は走れません。その後にリハビリをして練習の復帰は3ヶ月です。ぶつけたり、落としたりしない様に注意しましょうね。
ところで、レントゲンから帰ってきたI君。何回レントゲンを見ても骨折はしていません。彼にそれを伝えると、「先生!マジすか?ホント信じていいんすね?マジか!!よかった!!!」と泣いて喜んでいました。
彼はまるで嵐の様に去っていき、病院の中はまた静かになりました。バタバタしましたが、骨折してなくてホントに良かったと思いました。高校3年間をかけた大会をタンスに指をぶつけて欠場なんて、ホントに笑えないですから。
実は彼は結構有名は高校のゴールキーパーで、その後、予選の準決勝でPKを2本止めてヒーローになっていました。惜しくも決勝では負けて全国大会には行けませんでしたが、最後に仲間と完全燃焼できたのではないでしょうか。
色々な意味で、とても印象に残っている当直中の出来事でした。
それでは今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。