こんにちは、かじです。
今回は靭帯と腱と筋肉についてお話しします。実は分かりそうでよく分からないのがこれらの違いではないでしょうか。これらの違いについてできるだけ分かりやすくお話ししていくのでぜひ参考にして下さい。
この記事の内容を豆知識として知っていれば、みんなに少しだけ差をつけられるかもしれませんね。では、早速始めていきます。
靭帯と腱の違いを知った日
私達ドクターは医学部で様々な授業を受けますが、「医学部に入ったなー。」と実感するものの1つに解剖学があります。
私の大学では2年生までは他の学部の学生と一緒に、ドイツ語とか生物なんかの一般教養を受けていましたが、3年生からは医学部特有の授業が始まります。
それらの授業のうち初めにあった授業が解剖学で、私にとっては「まさに医学部」という印象があった授業だったので楽しみにしていました。
その解剖学の授業で、担当の先生が開口一番、「君たちの中に腱と靭帯の違いが分かる人はいるかな?」と質問しました。
もちろん、その場にいる医学生にとって「腱」も「靭帯」も聞いたことがある言葉でしたが、「あれ?そう言われてみると、、、」といった感じで、誰も答えることができませんでした。
今の私が知らないとかなりヤバいですが、医者だって最初はそんなものなので、あなたがスラスラと答えられなくても全く問題ありません。
この記事を最後まで読んでもらえれば、「靭帯と腱の違いってめっちゃ簡単!」と思ってもらえるはずです。このような身体の基本的な構造を知っていると、身体に対する理解のスピードや深さが全く変わってきます。ぜひ、この機会に靭帯、腱、筋肉の違いについて知り、身体への理解を一歩進めて下さい。
身体を動かすために必要な構造とは
まず、本題に入る前に、体を動かすという事ついて簡単にお話しします。
人間の身体が動くためには最低限、骨と筋肉が必要です。ざっくりと言うと、筋肉で骨を引っ張って身体は動きます。骨と骨のつなぎ目を関節と呼びますが、骨と関節だけでは身体は動かせません。
筋肉は必ず骨にくっついて、縮むことで(これを「収縮」といいます)ある方向に骨を引っ張ります。その引っ張られた方向に骨は動いて関節が曲がり、その連続で私達の身体は動くのです。
ここでイメージしやすいように具体的な例を1つ挙げて説明していきます。私達に一番なじみのある筋肉は、おそらく腕の力こぶ(上腕二頭筋)だと思いますので、今回はその筋肉を使っていきましょう。
話しを簡単にするために、これから登場する用語を箇条書きにします。肩から手首に向かって順番に書きます。
- 肩
- 上腕骨(じょうわんこつ)
- 肘
- 橈骨(とうこつ)
- 手首
そして、肩と肘の間に力こぶ(上腕二頭筋)があります。
詳しく話すとややこしくなるので、単純にすると上腕二頭筋は上腕骨と橈骨をつないでいます。ここで、上腕骨を固定して動かない状態で上腕二頭筋がグッと縮むと、橈骨が肘を支点に引っ張られるので肘が曲がる方向に動きます。
ここで注目して欲しい事は2点あって、1つ目は筋肉は骨にガッチリついていないと関節は動かないという事。2つ目は関節は支点になる必要があるから、グラグラせずガッチリと固定されている必要があるという事です。
つまり、
- 筋肉が骨につく構造
- 関節を固定する構造
この2つが身体を動かすには絶対に必要だというのをここでは知っておいて下さい。
腱と筋肉の違いとは
ここまで、靭帯も腱も出てこないではないか、と思われたあなた。もう少しだけ待ってください。ここまで前提となる基本の部分をお話してきましたが、ここからやっと本題に入れます。
今までの話で筋肉が骨を引っ張って関節が動くというのは分かったと思います。しかし、ここで大きな落とし穴があります。
それは、筋肉はとても柔らかい物体なので、そのままでは骨につくことができないのです。そこで、筋肉は徐々に硬い組織となり、やがて「腱」となって骨に付きます。そうすることでガッチリと骨に付く事ができます。
最も有名な腱はアキレス腱ですが、そのように太く硬い腱はガッチリと骨に付くことができます。
つまり、
筋肉
↓筋腱移行部(※その名の通り、筋肉から腱に移行する部分。)
腱
↓
骨
といった感じに徐々に硬くなり、ひと続きの構造になっているのです。
そういう訳で、靭帯、腱、筋肉の3つはそれぞれバラバラの構造ではなく、分類すると、
- 筋肉、腱
- 靭帯
という2つのグループに分けられるのです。
靭帯と腱の違いとは
今度は靭帯についてお話します。
- 筋肉が骨につく構造
- 関節を固定する構造
この2つが身体を動かすには絶対に必要だとお話しました。
このうち、靭帯は2つ目の「関節を固定する構造」に必要です。
筋肉の作用で関節が動くことは分かったと思いますが、関節は支点として固定されていないとグラグラして上手く動くことができません。
つまり、骨と骨をつなぎ、関節を支点としてしっかりと安定させるのが靭帯の働きというわけです。
ここまでの話を言い換えると、
- 腱は筋肉と骨をつなぐ。
- 靭帯は骨と骨をつなぐ。
と言うこともできるでしょう。
まとめ
最後にこれまでの話をまとめていきましょう。
まず関節は、筋肉で骨を引っ張ることで動くのでした。そのためには次の2つの構造が必要です。
- 筋肉が骨につく構造
- 関節を固定する構造
この2つの構造を作り出すために必要な要素が、靭帯、腱、筋肉でした。これらは、
- 筋肉、腱
- 靭帯
という2つのグループに分けることができます。
そして、それぞれの働きを言い換えると、
- 腱は筋肉と骨をつなぐ。
- 靭帯は骨と骨をつなぐ。
とも言えました。
ケガをした時に病院に行ったことがあると思いますが、私達ドクターはケガの種類を予測しながら診察を進めていき、最終的に診断をします。ケガを予測するためには、その痛い場所には何があるのかということを熟知している必要があります。
例えば、膝の内側が痛い時に、そこには靭帯があるのか、または腱や筋肉があるのか、そういったことが瞬時にわからなくてはいけません。その予測に基づいて、レントゲンやMRIといった検査を行い、診断していくのです。
今回は靭帯や腱、筋肉の基礎知識をお話しましたので、これからはこれらを使ってもう一歩進んだお話ができたらいいなと思っています。
それでは今回はこの辺で失礼します。最後までお読み頂きありがとうございました。