膝蓋骨骨折の手術とリハビリの禁忌を医者が徹底解説 

04.192016

この記事は4分で読めます

こんにちは、かじです。

 

前回は膝のお皿の骨(膝蓋骨)を骨折した時の対処法を中心にお話ししました。今回はその中で、手術の後に考えなくてはならない事をお話しします。

 

最後まで読んで頂くと、手術とその後の対応の全体像が分かるので、きっと安心して手術に臨めるはずです。

 

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膝蓋骨骨折の手術方法とは 

 

 

前回お話ししたように、手術が必要な時は骨折した骨同士が離れてしまっているので、手術でそれを元の位置に戻してあげるのでした。そうすることで、あとは自然治癒力で骨折は治っていきます。

 

このように、離れた骨をくっつける手術を骨接合術(こつせつごうじゅつ)と呼びます。

 

骨折した場所によって手術方法は変わりますが、膝蓋骨の場合、手術後のレントゲンは下の図のようになります。

 

 

画像

 

 

2本の金属性の棒で膝蓋骨の形を整え、その周りをワイヤーで8の字に巻きます。正式名称をtension band wiring(テンション バンド ワイヤリング)といいますが、そんな事は覚える必要はありません。

 

膝を曲げていくと一見、骨折部がまた離れてしまうように感じますが、この固定法ではそうはなりません。

 

 

まぁ、難しいことはさて置き、骨折で骨がバラバラになってしまった場合は除いて、パカッと単純に割れた膝蓋骨骨折の手術はそれ程難しくはなく、手術翌日にすぐに歩いていい位です。

 

 

 

では次に、できるだけ治療期間を短くしたい、もしくは、早くスポーツに復帰したいという人は手術後にどんなリハビリをするべきなのでしょうか。
参考記事
スポーツリハビリをするトレーナーの病院での仕事内容と資格と年収を解説

 

 

膝蓋骨骨折のリハビリ期間とトレーニング方法をしっかり解説 

 

 

どんなに簡単な手術でも、無事に終わったからと言って、さぁすぐに走ってもいいよ。とはなりません。

 

 

分かっているとは思いますが、たまに手術終了=完治と考えている人がいるので、念のために言っておきます。

 

ちょっとしたヒビでも、骨がガッチリとつくまでは、最低2ヶ月はかかるので、それまでは骨折部をムリに動かしてはいけません。

 

とは言っても、膝蓋骨の手術の場合はかなり強力に固定されているので、ちょっとくらいの動きでは骨はズレません。動かすことに関しては基本的に安心してもらっても大丈夫です。

 

 

ところで、普通のリハビリとスポーツリハビリとは根本的な考え方が違うので、ここでは、これから一般的なリハビリの考え方をお話しします。

 

 

膝蓋骨骨折に限らず脚のリハビリでは、次の2つのことを頭に置いて行います。それは、

  • 体重をかけてもいいのか
  • 動かしてもいいのか

という事です。

 

体重に関しては色々なパターンがありますが、今回のような単純な膝蓋骨骨折の場合は手術直後から全ての体重をかけてもよいと言えます。(※これを正式には全荷重(ぜんかじゅう)してもよい、と言います。)

 

 

また、関節の動く範囲の事を可動域(かどういき)と呼びますが、その可動域に関してもできる範囲で始めていってもよいとなります。(※膝の場合は、手術後2週間は90°しか曲げてはダメ。なんて事もよくあります。)

 

 

このように、膝蓋骨骨折の手術後は体重に関しても可動域に関してもあまり細かく気にする事はなく、強い痛みが無ければドンドン動かしてもいいのです。そして、よく動かした方が早く完治するのです。

 

 

しかし、そうは言っても、この手術の後でやってはいけない事もあります。それはいったい何でしょうか。この次に説明していきます。

 

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膝蓋骨骨折の禁忌で膝の痛みが出現する場合とは

 

 

私達医者が手術後に気にしているのは、次の3つです。

 

  1. 傷口のばい菌(感染症)
  2. 金属が抜けてくる
  3. 関節が硬くなってくる(拘縮)

 

それぞれについて説明していきます。

 

 

「1、傷口のばい菌(感染症)」は手術後の永遠のテーマです。手術では傷は深くまで切り込んでいるので、いったんばい菌が入ってしまうと深い所まで行ってしまいます。

 

最近では良い薬(抗生剤)が出て、感染症はだいぶ予防できるようになってきましたが、それでも100%予防はできません。

 

一度ばい菌が入ってしまうとその後の治療が大変なので私達は慎重になっています。(※感染症は手術全体の0.5%くらいです。)

 

 

「2、金属が抜けてくる」というのは、手術で入れた金属が抜けてしまう事です。

 

これまで、手術後にはドンドン動かした方がいいと話してきました。しかし、その動かし方が問題で素早くガシガシ動かすと金属が抜けてくることがあるので、動かす時は慎重にゆっくりと動かしましょう。

 

もし、金属が抜けてくると、皮膚を内側から押して見てすぐに分かるくらい出っ張ってきます。

 

 

「3、関節が硬くなってくる(拘縮)」というのは、手術後のリハビリが十分にできない事が原因で可動域が狭くなる事です。

 

拘縮とは、骨というよりもその周りの靭帯や筋肉、神経や血管が縮んで動かなくなってしまう事です。

 

ですから、いったん拘縮してしまうと元の状態に戻るのはとても大変なので、そうなる前に手術後すぐに膝を動かした方がいいのです。

 

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まとめ

 

 

今回は膝蓋骨骨折の手術についてお話ししてきました。

 

 

まず、膝蓋骨骨折の手術は2本の金属性の棒で膝蓋骨の形を整え、その周りをワイヤーで8の字に巻きます。

 

 

また、手術後のリハビリでは、私達医者は

  • 体重をかけてもいいのか
  • 動かしてもいいのか

という2つのことを頭に置いています。

 

 

そして、手術後に最も気を付けるべき事は、

  1. 傷口のばい菌(感染症)
  2. 金属が抜けてくる
  3. 関節が硬くなってくる(拘縮)

の3つでした。

 

 

では、今回はこの辺りで失礼します。ありがとうございました。

 

 

 

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プロフィール

はじめまして、かじです。私はアスリートを目指していましたが怪我で諦めました。その後、スポーツドクターを志し、現在はアスリートからスポーツ愛好家の方々の怪我を治すのはもちろん、彼らの能力が最大限に発揮されるようにサポートしています。私自身がアスリートを目指していましたし、現在まで多くのプロ選手をサポートしてきたので、スポーツドクターの視点から選手がステップアップするためのヒントをお伝えすることができます。ですから、怪我をしている時はもちろんのこと、怪我をしていなくても私が伝えられることは沢山あるのです。そして、私はアドバイスをする時は、現役時代だけではなくその人の人生全体を見た時にどうするべきかという視点を大切にしています。壁にぶつかったり、行き詰ったりしていて、何かヒントが欲しい時は気軽にお問い合わせ下さい。そうすることできっと前に進めるはずです。 ⇒詳しくはこちら

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