こんにちは、かじです。
今回は太ももに強い打撲をした時の対処法についてお話しします。スポーツをしているとよく太ももに相手の膝がぶつかることがあります。これをただの打撲として対処するとマズい場合も多いのです。ぜひ、この記事でひどい打撲の対処方法を学んで下さい。
それでは、この記事を読んでいるあなたの能力が最大限に発揮され、所属するチームに貢献できるように祈りながら進めていきます。
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膝での打撲の処置とは
ある地域のサッカー高校選手権県大会の準決勝に私のサポートしているチームが進出した時の話です。あと1つ勝てば創部以来初めての決勝進出となる試合前、部員全員は今までになく一致団結していました。
チームの状態は最高で、各選手も絶好調、ケガで試合に出られない選手は1人もいません。
県大会の準決勝からはJリーグでも使われるようなスタジアムで試合ができるとあって、選手のテンションもどんどん上がっているように見受けられます。
いつもと同じように、試合開始直前にロッカールームで全員で円陣を組み、気合を入れて声を出してからスタジアムに入りました。
試合開始のホイッスルで試合が始まり、開始早々からこちらのペース。しかし、何度もチャンスを迎えるのですがゴールがなかなか決まりません。監督も気合十分で、ベンチからいつも以上の声で指示をしています。
前半は終始こちらのペースでしたが、あと一歩でゴールが奪えずいまだ0-0、「このままハーフタイムになりそうだな。」と思っていた矢先に、スピードに乗ってドリブルしていたこちらのエースA君と相手選手がぶつかりました。もちろん相手選手の反則。
「バチン!」と音がして、両選手ともに倒れています。
相手選手はすぐに起き上がりましたが、A君は倒れたままです。そして、このタイミングで前半終了となりました。
私はA君に駆け寄り、「大丈夫?どこ打った?」と声をかけると、右太もも前を抑えながら、「相手の膝が入りました。」と答えます。
腫れはひどくなさそうですが、かなり痛そうです。関節を捻って捻挫をしたり、肉離れをしたのならプレーは続けられないと判断して交代するしかありませんが、彼の場合は打撲です。
普通、打撲程度で交代したいと思う選手はいません。
「とりあえず軽く冷やそう。行けそうか?」と聞くと、「大丈夫です!」と全く問題ないですという感じ。「試合が終わったらちゃんと処置をしようか。」と言ってA君をみんなの和の中に戻しました。
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膝での打撲で違和感がある場合はどうする
普通、打撲をした場合は、打撲の場所によらずに15-20分程度、氷で冷やすのが良いと言われています。-しかし、氷で筋肉を冷やすと固まって動きが悪くなるので、一般的には試合や練習が終わってから冷やします。
今回のA君みたいに試合中に打撲をした場合、あんまり長い間冷やすと筋肉の動きが悪くなり、試合の動きに悪影響があります。
体の動きを良くするために、ウォーミングアップで筋肉を温める訳で、氷で冷やすのはその逆の事をしてしまっているのです。
とはいえ、試合中は身体が最高に温まっている状態。温まり過ぎているからハーフタイムにはできるだけ冷やさなければ、後半にオーバーヒートしてしまう事も。ですから、氷で5分くらい冷やすくらいでは、冷えすぎて動きが悪くなるなんて事はありません。
冷やすと痛みを感じにくくなるという効果もあるので、ここは5分程度氷で冷やしてから後半に送り出しました。
そして、試合が終わってから再度冷やしてあげるのですが、ここで太もも前に関しては他の場所と異なるワンポイントアドバイスがあります。
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太股の痛みの原因が打撲の場合
後半が始まり、A君は右太ももを痛がるそぶりは見せていますが、彼を中心に攻撃は組み立てられています。そして、緊迫した試合は終了5分前にA君の劇的はゴールで勝利!初の決勝戦進出で、試合は1週間後。
みんな大いに喜んでいる中、私はA君の打撲の状態が気になり、状況を確認しに行きました。A君は自分のゴールで勝利した事に喜んでいましたが、右の太ももは腫れ上がっています。触るとかなり痛そう。
「これ、1週間で治りますか?」「次出れないなんてあり得ないすよ!」とA君。「大丈夫!できる限りの処置をしよう!」と言って氷で冷やしました。
私がA君に出した指示は、
- 今日明日の2日間は練習をしないでアイシング
- アイシングする時は太もも前をストレッチしながら(膝を曲げながら)
の2点です。
特に2つ目が重要で、これをするかしないかではかなり変わってきます。というのは、打撲したら筋肉内に内出血するのは仕方ありません。その筋肉内の血液をどのような状態で固めてしまうかが大事なのです。
内出血した血液は最初は液体ですが、そのうちに固まってきます。体の外に出たらかさぶたのようにものすごく硬くなりますが、体内ではそこまで硬くはならずにゼリー状です。そして、アイシングすると血液は固まってきます。
想像して欲しいのですが、
- 膝を伸ばしたままで筋肉内で血液が固まるのと、
- 膝を曲げた状態で血液が固まるのと、
その後に膝を動かした時に痛みが強いのはどちらでしょうか。
まずは、
- 膝を伸ばした状態⇒太もも前の筋肉がゆるむ
- 膝を曲げた状態⇒太もも前の筋肉が伸びる
を理解してもらった上で、
- 膝を伸ばしたままで固めた
- 膝を曲げた状態で固めた
ものを曲げ伸ばしすると下の方が痛みは少ないのです。
上の方が一般的な処置の仕方として広まっていますが、これをすると固まった後に膝を曲げるとめちゃくちゃ痛くなります。これは、私自身の経験からもはっきりと言えます。
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▶太ももの肉離れが完治する処置と治療とは?医者がハムストリングス肉離れの早い治し方とスポーツリハビリを解説
まとめ
ここまで、太もも前の打撲の処置についてお話ししました。
痛みの強い場合は、
- 2日間は練習をしないでアイシング
- アイシングする時は太もも前をストレッチしながら(膝を曲げながら)
の2点が大切です。
1週間後の決勝戦、A君の太ももの状態は思ったよりもひどかったのですが、何とか試合に間に合いました。
万全の状態ではありませんでしたが、一生懸命に走り切り、PK戦の末に全国大会の切符を手にしました!試合後にはA君と泣きながら抱き合い、喜び合いました。
こういう瞬間は、スポーツドクターをしていて最も嬉しく思う時です。少しでも貢献できた事が素直に嬉しかったです。このブログでも、少しでもお役に立てる記事を書き続けていきたいと思います。
それでは今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。