こんにちは、かじです。
今回は足首捻挫の治療が上手く進まない場合に疑うべき怪我についてお話しします。
足首捻挫が順調に回復した場合は問題ないのですが、痛みが残ったり再発する事が続く時には対応が必要です。私自身の苦い経験で、当初考えていた怪我とは違ったという経験もした事がありますので、それも含めてお話しします。ぜひ参考にして下さい。
それでは、
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▶足首の痛みと腫れが外側か内側か前側か後ろ側にあるかで治療が変わる!!医者による足首の痛み部位別まとめ
目次
病院で足首捻挫と言われた大学生
ある日、私はサポートしている大学サッカー部の練習に行きました。
練習に入れないリハビリの連中の様子を確認していると、この前捻挫の相談に来たF君がこう言います。「2週間前に病院で足首の捻挫だと言われました。けど、なかなか痛みが取れません。この状態だとプレーできないっす。」
「そうか、病院でレントゲンは撮った?」と質問すると、
「はい、レントゲンでは問題ないって言われました。」
とのこと。
この手のケガはよくあって、長引く原因は、
- 思ったよりも重症であった
- そもそも病院での診断が間違っている
のどちらかです。
上の場合は、もう少し時間をかけるだけで解決する事が多いのですが、
問題は下の場合です。
私自身の若い頃の経験でも、最初に下した診断が間違えていて、もう一度詳しく検査をしたら違う怪我だった。という事もありとても苦い経験です。しかし、そのような経験を経て、現在ではかなりの確率で正確に診断できるようになりました。
そういう意味で言うと、足首捻挫の治療が長引く時にも決まったパターンというのがあります。今回お話しするのは、そのうちの1つです。
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なかなか治らない捻挫への対応
私はF君に聞きました。「どんな風に足首をケガしたの?」
すると彼は、「シュートブロックしたら、つま先を外側に持っていかれたんです。」と言います。図で表すと下のような感じです。
「あ~、なるほど!」それを聞いた瞬間に私の頭ではケガした時の状況が浮かび上がり、彼の足首で何が起こっているのかが理解できました。
そして、彼の足首を実際に触ってみてその予測は確信に変わりました。サッカーでよくある捻挫とは痛めている靭帯が違っていたのです。
こういう状況はよくありますが、たいていこういう場合は、「どんな風にケガしたのか?」という基本的な事をもう一度選手に聞き直すのが1番です。
サッカーではこの動きで怪我をしたらこの部位を痛めてしまう、というのが大体決まっています。ですから、私の様にサッカーを経験した事のある医者であれば、話を聞いただけで瞬間的にケガをした場所が分かる事も少なくありません。
さて、F君の場合はいったい足首がどうなっていたのでしょう。
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▶足首の捻挫と骨折の違いとは?足首の骨や靭帯などの基本構造を医者が徹底解説
足首捻挫で1番やっかいな靭帯とは
サッカーで最も多い捻挫については以前お話ししました。今回お話しする捻挫は痛める場所が上の捻挫に非常に近く、間違えやすいです。
しかし、ケガをした状況や痛い場所を丁寧に観察すればその違いは明らかです。
F君の場合は、脛腓靭帯(けいひじんたい)という靭帯を損傷してしまったのです。
さてここで以前に解説した足首の基本構造を復習しましょう。
足首には脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)という2つの骨が凹を作り、
そこに距骨(きょこつ)が凸としてはまり込んでいます。
そして、脛骨と腓骨の間には脛腓(けいひ)靭帯という靭帯があり、
足首を安定させる働きをしているのです。
そして、足首の凸の距骨が外旋(がいせん、外に扇方に動く事)すると脛骨と腓骨が引き離される方向に動いて、その間にある脛腓(けいひ)靭帯をケガしてしまうのです。
さて、この脛腓靭帯は一度ケガをしてしまうと彼の様に治りにくい事が多いのですが、それはなぜでしょうか。
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脛腓靭帯が治りにくい理由とは
脛腓靭帯は重要な役割をしています。
足首の構造をもう一度見ると、普通に歩くだけでも距骨は上に突き上げるので、脛骨と腓骨が開く方向に力が加わるのが分かると思います。
走ったりジャンプしたりすると尚更その力は大きくなり、脛腓靭帯に力が加わり続けるのです。
だから、この靭帯はなかなか治りにくいと言われるのですが、さらにやっかいな落とし穴にはまる事もあるのです。
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脛腓靭帯損傷の対応はどうする?
さて、ここまでは脛腓靭帯損傷について説明してきましたが、実際にそのケガをした時はどのような対応をすべきでしょうか。
基本的には他の足首捻挫の対応と同じで構いませんが、いつもよりも慎重にリハビリを進めた方が良い場合が多いです。
つまり、一般的な捻挫のリハビリよりも時間がかかるという事です。
急いで復帰しても、また同じようなプレーで再受傷してしまう事が多いので、ボールを扱えるようになってからも無理に練習に参加しない方がいいでしょう。
しかも、足首の外旋を抑えるようなテーピングをするのは難しい、というのも復帰を急がない理由です。とは言っても、きちんとした手順を踏めば必ず復帰できるので心配はいりません。
普通の捻挫が2週間を目安とするのに対して、脛腓靭帯損傷は3-4週間程度を目安とすると良いでしょう。
さらにグランドに復帰する際には、できるだけテーピングで足首をガチガチに巻いて固定してあげる事が大切です。
それで問題なければ、少しずつテーピングの種類を変えて固定を緩めていきましょう。
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▶足首捻挫の治療で痛みが長引く時に考えるべき事とは?医者が脛腓靭帯剥離骨折を解説
まとめ
今回は足首捻挫の中でも脛腓靭帯損傷についてお話ししました。
普通の内反捻挫と間違う可能性がありますが、ケガをした状況や痛い場所を聞くと違いに気付けるのでした。
また、他の捻挫よりも復帰に時間がかかる理由もお話ししました。
まずは捻挫にも沢山の種類がある事を知ってもらい、治るのが遅い時は他の医者に相談するのも1つの方法だと思います。
脛腓靭帯を損傷した場合は、どうか焦らずにリハビリをして下さい。
それでは今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。