こんにちは、かじです。
今回は、擦り傷などに対して行うラップ療法についてお話します。この治療法は比較的新しい方法で注目されていますが、メリットだけではなくデメリットもあります。その辺りの話もしていくので、ぜひ参考にして下さい。
それでは、この記事を読んでいるあなたの能力が最大限に発揮され、所属するチームに貢献できるように祈りながら進めていきます。
参考記事
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今回は、ラップ療法についてお話します。
擦り傷などの傷にラップを巻く治療をラップ療法と呼び、数年前から話題になっています。奇跡の治療だ!とまで言われていました。
キズパワーパットなどの市販で買える絆創膏(ばんそうこう)は、ラップ療法を手軽に行える道具として登場しました。
医療業界でも一時はラップ療法が大変流行りました。しかし、治療を続けているうちに、ラップ療法のデメリットも数多く報告されるようになり、万能ではない事が分かってきています。
ですから、今回はラップ療法のメリット、デメリットを説明し、どのように治療に取り入れていくべきかを説明していきます。
流行りに流されず、その治療を理解する事が重要です。
それでは、始めていきましょう。
ラップ療法のメリットとは?!
まず、ラップ療法ってなんなの?というところから話していきます。そもそも、これまで擦り傷に対する治療とは、どの様に行われていたのでしょう。
自分が子供の頃は膝を擦りむいたら、まずは消毒して、それからガーゼをあてて、ガーゼをはがす時には、メリメリ!とすごく痛くて。そんな記憶はあなたにもあると思います。
そのメリメリっとはがれてしまったかさぶたや傷口から流れ出る黄色い液体の中には、傷を治すのに有効な物質が沢山入っている事が分かってきました。
だから、ガーゼのようなくっ付きやすいもので保護するのは良くなく、できるだけその物質がはがれてしまわない様にするのが推奨されています。
そういう経緯があり、それならラップで保護して、その黄色い液体を傷口の周りに留めておこう。そうすれば、傷は早く治るし、きれいに治る。というのが、ラップ療法の目的です。
一見、とても理にかなっているように見えますよね。確かに、たいていは傷口はとてもきれいに治ります。しかし、そうは上手くいかないのが治療の世界。それによって、大変な事が起こってしまったという報告を最近はよく聞くようになりました。
ラップ療法のデメリットとは?!
ラップ療法の最大のデメリットは、バイ菌の感染に弱い事です。万が一、ラッピングした傷口にバイ菌がいた場合、その菌はめちゃくちゃ増えます。そして、かなりひどい状態になります。
というのも、ラップ療法の開発者はラッピングしたらできるだけ開けない事を推奨しています。場合によっては1週間もの間、傷口を開けない事もある様です。
一応、ラップは透明だから、バイ菌が入ったら見て分かる、というのが見解のようですが、そう上手くいかない事も多く苦労しています。(※たいてい、バイ菌が入ると膿(うみ)が出で、傷口から出ていた黄色い液体とは見た目が変わります。つまり、濁ってきます。)
それに、ラップ療法が危険な理由がもう1つあります。あなたも理科の実験とかで見た事があるかもしれませんが、バイ菌を実験室の中で増やす為には、栄養と温度を調節します。
つまり、適切な培地(ばいち)の中にバイ菌を入れてやると増えるのです。(※培地とは、バイ菌を増やすのに適切な場所の事。バイ菌が好む栄養豊富な場所です。たいていは丸いシャーレと呼ばれるプラスチックの中で増やします。)
勘の良い方なら気付いたと思いますが、この培地とラップの中は非常に似た環境なのです。ですから、もしバイ菌がいた場合は、ラップの中は増えるのにとても良い環境が整っています。そして1週間もあれば、爆発的に増えてしまいます。
何で透明なのに気付かないのか。と思われるかもしれません。例えばずっと入院をしている患者であれば、私達が見てすぐに気付く事ができます。
しかし、たいてい擦り傷で入院する事は無く、ラップをしたまま「来週来てください。」と言われてそのままにしてしまう。そんな事が多い様です。
一度バイ菌が繁殖した傷は簡単には治りません。毎日洗浄したり、抗生物質の薬を飲んだり、下手をすると治るのに数か月かかる事だってあります。そういう理由もあって、私はラップ療法を全面的には勧めません。
ただ、ラップ療法のいい所は利用したいので、いい所だけ取り入れています。
結局どうすれば良いの??
まとめると、前回もお話したように、
- 最初は大きなゴミを洗い流す
- 皮膚を保護する(←ここにラップ療法を利用)
- 毎日洗って乾燥するまで保護する
という手順がお勧めです。
その中で、毎日の保護に傷につかない絆創膏を利用するのは全く問題ありません。(※もちろんラップでも問題ありません。)
毎日洗うのは、万が一バイ菌がいたらそれを洗い流す為。ラップ療法を取り入れるのは、治療に役立つ液体を傷に留める為。ただ、傷口からの液体が多い時期は、ラップでは吸収できずにべたべたになってしまうので、くっ付きにくいガーゼを利用するのが良いでしょう。
結局は、基本に忠実に傷の処置を行うのが良い、というのが私の結論です。擦り傷ができた時は、このように対処してみて下さい。
それでは、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。